真紅をこらしめてやりたい。

大体アイツは呪い人形のクセに生意気すぎるんだよ。
情けで家に置いてやってるのに、僕の事を下僕とか言いやがって…。
雑用係になったつもりはないっつーの!
オマケに僕が何かするたびに小言は言うし…。

おとといは紅茶。
「ほら、これでいいだろ」
「ジュン、これでは温すぎるわ。淹れなおしてきなさい」

昨日はTV。
「……(真剣)」
「なあ真紅、チャンネル変えていいか?」
「ダメよ!今はくんくんが迷路を……あぁ!くんくんがっ!!」
「ちょっと位いいだろー。見たい番組があるんだよ」
「あぁもう黙ってなさい!(ツインテールアタック)」

今日は…
「ジュン、私が何を言おうとしているかわかっているわよね?」
「さ、さぁ…」
「貴方私が毎週大事にだーいじに録画しているくんくん探偵のビデオにくっっっっっっっっっっっっっっっっっだらない番組を上書き録画したでしょう!
大体あの番組は何?怪奇夜な夜な動く市松人形なんて知性の欠片も見られないようなタイトル。それにジュン。よく考えてみなさい?
動く人形なんて非科学的なものがこの世に存在するハズがないのだわ。少し考えてみればわかることでしょう?全く貴方はいつまでたっても下僕としての自覚が(以下略)」

もう堪忍袋の緒が切れた。
絶対に許せん。
僕は真紅に復讐をすることにした。
…とはいえ、奴は一応呪い人形。
うかつに攻撃しようものなら……逆に痛い目を見ることは必至だ。
そして考えに考えた結果、最高の作戦が思いついた。

「おい真紅、これやるよ」
食後のティータイム中の真紅に、ある物を差し出す。
「…変わった機械ね。何かしらこれは」
「携帯電話だよ」
「あら、せっかくだけど私には必要ないわ。かける相手がいないもの」
携帯電話を押し返す真紅。
「言うと思った。けどこの携帯電話は特別な機能がついてるんだぞ?」
「そう」
全く興味がない、と言った感じでスコーンを食べている。
ここまでは予想済み。
しかし、ここからが本番だ。

「通販で買ったんだけどさ、この携帯……くんくんからメールが届くんだ!!」
くんくん、と言うワードに一瞬反応する真紅。
思ったとおり奴はくんくんに目がない。
「…メールとは何?」
「んー、手紙みたいなもんかな。携帯電話同士でやり取りする手紙だよ」
「なんですって!!!」
カチャン、とカップを置き立ち上がる真紅。
続いて僕から携帯電話を奪い取る。
「くんくんから…手紙が……」
何やら、携帯電話を見つめてうっとりとした表情を浮かべている。
大方くんくんと恋文を交わしているシーンでも想像しているのだろう。
「あぁっ…もう、くんくんったら……
わかりやすい奴め。
「…で、どうする?ホントにいらないのか?」
「いいからははははやく教えなさい!メールとやらのやり方を!!」
真紅、我が術中に落ちたり。

「…さて、と」
真紅に大体の操作方法を教え、自室に戻る。
後は僕が『くんくん』になりきって奴にメールをすれば…。
…想像しただけで笑みがこぼれてくる。
早速送ってみることにしよう。

 

件名:こんにちは、真紅ちゃん!
To 真紅
本文

やあ、こんにちは。
僕が誰だかわかるかい?
…あ、メールだからわかっちゃうか。はははっ!
そう。僕は名探偵くんくん!
真紅ちゃん、いつも番組にハガキをありがとう!
キミの温かい応援メッセージに、僕はいつも力をもらっているんだ。
だ・か・ら
キミにだけ 特 別 にメールを送ることにしたんだ!
よかったら、僕とメル友にならないかい?
共にペロリーナ男爵と戦おうじゃないか!
では、お返事待ってるね!
よろし〜くんくん!

 


「…こんな感じかな」
我ながら、くんくんっぽく書けてると思う。
反応がとても楽しみだ。
含み笑いをしつつ送信ボタンを押す。
「さーて、真紅のヤツどんな…」

「きゃあああああっ!くんくんっっっっ!!」

一回から絶叫とも取れる真紅の叫び声が聞こえてくる。
「声でけー…」
まぁ好評と見ていいだろう。
作戦は順調のようだ。
真紅は一体どんな返事を書いてくるのだろうか。
ちょっとドキドキ。

数分後、真紅から待望のメールが届いた。

 

件名:こんにちは、真紅です。メールありがとうございます!くんくんからメールを頂けるなんて、もう夢のよう…。
ハガキ、毎週読んで頂いて光栄です!くんくんのためなら私、何百枚でも書けますわ。
私も是非くんくんとメル友、いえそれ以上の関係に…なんて、私ったら何を書いているのかしら!
打倒ペロリーナ男爵、力を御貸ししますわ。
ローゼンメイデンの名に懸けて、くんくんを守って見せます!
P.S. …所で、くんくんはどのような女性が好みですか?
    私はもちろんくんくんが超タイプですわ
From 真紅
本文

 


「…ぷっ」
思わず噴出してしまった。
文体は普通だけど、それ以上の関係…って初回から下心丸見えじゃねぇか…!
ていうか本文書くとこ間違えてるし。
まぁ、上手く引っかかってくれて第一段階は成功ってとこかな。
続けて送ってみよう。

 

件名:僕の好みはねー
To 真紅
本文

お返事ありがとう、真紅ちゃん。
けれど、本文を書く所が間違っていたよ。このオッチョコチョイ♪
おっ、早速の質問だね!受けてたとう!!
僕の好みはねー…
…うーん、明るい子かな?
真紅ちゃんはどっちかと言うとクール系なのかなぁ?

 

「あ、明るい!明るいわよくんくんっ……!!」

またもや1階から絶叫が聞こえる。
騒がしいヤツだ。
そして、間もなく返信が来る。

 

件名:そんなことないのよーっ☆
From 真紅
本文
てへへ、ちょっと間違えちゃったぁ…♪
えっ、私がクール系にみえた??
やーのぉ〜くんくんったらー♪
私は明るい女の子なのよっ☆
ときどき「騒がしいっ!」って家の人に怒られちゃったり…;
…あっ、そろそろ夜ご飯みたいなの。
また後でね!くんくんっ


何者だお前は。


「ってか、まんま雛苺じゃん…」
しかし、あの真紅がこの文を打ったのかと思うと笑いが止まらない。
わざわざ携帯2台も契約した甲斐があったというものだ。
こうなったらトコトン遊んでやろう。

この遊び(復讐)は当分止められそうにない。

 

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