僕は今日も通販をしていた。

 

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精霊界の力を借りて、どこよりも白くしたポケットティッシュ
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一度鼻に当てるだけで、たちまちエキセントリックな心持ちになれます。
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※もちろん漂白などではありませんので、人体無害です。

 

あえて何も言うまい。
僕はいつも通りそれを買い物カゴに入れた。
その瞬間、部屋のドアが開いた。
「じゅんー」
やはり来たか雛苺。
前回の謎料理(ダークマター)を食べさせられた僕は、三日三晩生死の境を彷徨ったのだ。
もう、いくら誘われても二度と食べるものか。
「もう僕は何も直さないし、何も食べないぞ!」
「違うの、これを見てほしいのー」
そう言って雛苺が取り出したのは、2つのハンドマペットだった。
最近流行の黒子の様なお笑い芸人が手に入れてパクパク動かしているアレだ。
「ヒナね、お人形劇作ったの!だからジュンに見てもらいたかったの〜♪」
「嫌だ」
「でねでね!こっちがダニエルで、こっちが山三郎!」
「話聞けよ」
雛苺は僕を完全に無視して話を進めていた。
「ではでは、始まり始まりなのー☆」

『ねぇ、山三郎。僕ね…好きな人が出来たんだ』
『дα!: ̄…』

『ううん、まだ告白はしてないんだけど…』
『../.#в'』

『えぇっ!は、恥ずかしいよそんなの…』
『uδ…』

 

 

「なあ、初っ端意味わかんないんだけど」
「えっとね、山三郎はドリブロネイゴ星人なのー」
「僕はドリブルネロロ語なんてわからないんだけど」
「ドリブロネイゴなのー」
「どうでもいいよ」
「ぶー…じゃあ地球の言葉に直すのー」

 

『でさ、この前の写生の時……彼女と目があったんだよ』
『メロンパンおいしいなぁ』

『俺もう緊張しちゃってさぁ、なんて話しかけたらいいか迷っちゃって…』
『焼きそばパンおいしいなぁ』

『でも俺勇気を出して言ったんだ!なんて言ったと思う?』
『ライ麦パンおいしいなぁ』

『そう!俺頑張ったんだぜー!!』
『ぶどうパンおいしいなぁ』

 

 

「会話噛み合ってねぇよ」
「異文化コミュニケーションは大変なのー」
「そんな社会の事情はいいから、もっとわかりやすいのを頼むよ」
「ぶー…じゃあ、ラブロマンスでいくの〜」

 

 

『山三郎、ちょっと話があるんだけど…』
『はい』

『実は俺さ、ずっと前から…』
『はい』

『……ずっと前からお前の事が大好きでした!!』
『はい』

『だから…だから……』
『はい』

『俺と、俺と付き合ってください!』
『嫌です』

『そうですか』
『はい』

 

「うぅっ、せつないのー……乙女の純情ハートブレイクなの〜……」
「まずどっちが乙女役だったのかを教えてくれ」
「あ、よく考えたらどっちも男の子だったの!でもそれはそれで良い感じなのよ〜っ!
「帰れ」

 

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