真紅のメールはとことん有害だ。
最近気づいたのだが、奴のメールは精神面だけでなく、経済的にも僕を圧迫している。
先日我が家に送られてきた明細書、携帯料金の請求書なのだが、料金欄を見て僕は愕然とした。

パケット料金6万円

僕はくんくんメール以外に携帯を使わない。
ネットもPCで出来るから携帯でする必要はない。
オマケに先月は奴に5回程しか返信していないはず。
ということは、奴からのメール受信料だけで6万も取られているという計算になる。
これにはスパムもビックリだ。
こんな事ならパケット定額に入っておけばよかった……。
今更後悔してもどうにもならない。
けれど、さすがにこんな料金は払えないので、困った僕はお客様相談センターに電話してみた。

「メールもクーリングオフできませんか?」

切られた。
仕方ないので、この料金は姉ちゃんの貯金をこっそり下ろして払わせてもらった。
姉ちゃんこの件は素直にごめん。
でも文句は真紅に言ってくれ。
しかし、ここで僕は恐ろしい事に気がついてしまった。
僕の携帯料金が6万なら……。

――真紅の携帯料金はどないなっとうと?

こればかりは考えたくもない。
6桁軽く超してそうで怖い。
そんな請求書が着たら我が家はどうなるんだ……。
とか思ってたのだが、これは杞憂ですんだらしい。
後日届いた真紅宛の請求書には、3780円という良心的な料金が書かれていたからだ。
だが、よく考えるとこれはおかしい。
受信している僕が6万も取られているのに、送信者である真紅がこんなに安いのは何故だ?
真紅も僕と同じ料金コースだから、奴もパケット定額には入っていないはず。
まぁ結果的には助かったのだが、どうも腑に落ちない。
僕は直接真紅に聞いてみることにした。
その真紅の答えはこうだ。

「簡単なことよ、怪しまれない程度にパケットを巻き戻しているのだわ。とんでもない携帯料金が着たら困るでしょう?」

詐欺だろそれ。
だが家計に優しいのは事実なので、これ以上の言及は出来ない。
「どうせならくんくんにも優しくしてください」
「むしろ関わらないでください」
これが言えたらどれだけ楽なことか……ッ!
言ったら生命に危険が及ぶであろう事は明白なので、僕はいそいそと自室に撤退する。
『あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ……』
部屋に入るなり、耳にまとわりつく不快な着信音。
真紅からの着信は全て『呪怨』の少年が吐く独特の声を採用。
私的にかなりマッチしていてgoodだと思っている。
ちなみに、蒼星石からの着信は『セビリアの理髪師』
極稀に来る元治からの着信は『葬送行進曲』にしている。
僕はベッドに投げられた携帯を拾い上げ、鬱に駆られながらも受信フォルダを開いた。
メールは79件。全て真紅からだった。

 

件名 殴りま☆くりすてぃー
From 真紅
本文

こんにちわ、くんくん♪
今日はとっても良いくんくん日和だったのだわ。
なのに雛苺ときたら……!
下僕のくせに、のりが買ってきた『くんくんぷちシール』を私より一枚多く取ったのだわ!
なんたる暴挙!!
だから私は、そんな雛苺を……クリスティー☆

くんくん、いい事を考えたのだわ!
今度からメールの最後に、二人でしりとりをしましょう。
まず最初は私からね、行くわよくんくん

くんくんマイラブあいうぉんちゅーあいにゅーじゅー結婚しましょう新婚旅行は熱海?軽井沢?
ああもうくんくんとならどこでもいいのだわ

の『わ』なのだわ☆
では、御機嫌ようくんくん

 

「クリスティー☆じゃねぇよ……」
相変わらずの真紅節だった。
何があったのかは知らないが、とりあえず雛苺に合掌しておこう。

 

件名 殴られまく☆りんどばーぐ
To 真紅
本文

やあ真紅ちゃん、今日は物凄い曇天だね。
雨というか槍が降ってきそうだよ。参ったなあ、ハハハッ!
真紅ちゃん、喧嘩はいけないよ?
例え雛苺ちゃんが君より多くシールを取ろうが君に殴りかかろうが僕が君から受けている精神的苦痛及び経済圧迫に比べたらそれはとても些細なものであり本来なら気にかける必要もない位どうでもいいことなんだ君が僕にしていることに比べればねまぁこうやって君に説明したところで君はどうせ曲解してというより君の頭のフィルターが180度方向転換した答えを導き出すに決まってるんだああそうだろう君はいつもそうやって僕を苦しめるんだ僕のことなんて考えてなんかいないんだそうだよね君はいつもそうなんだそうなんだそうなんだそうなんだそうなんだそうなんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
はぁ……はぁ……はぁ……。

――おや、変なノイズが混ざっちゃったみたいだね(笑)
気にしないでといいたい所だけど、気にしてね!ってか気にしろよ!!

で、しりとりだったね。
凄い嫌だけど乗ってあげるよ。
乗らないと更に酷いゲームになりそうだからね。
『わ』だよね?
えーと、『わ』かぁ……。

私の事はもう放って置いてください。

『い』だよ、真紅ちゃん!
出来ればもう送り返してこないでね!くんくんからのお願いだヨ

 

「送信っと」
ここまで嫌悪感剥き出しにして書いたのは初めてかもしれない。
今までは僕の中で少し真紅に大しての遠慮というものがあったのかもしれないが、もう限界だった。
これ位書かないと奴は自覚しない。
いや、これでもまだ足りないかもしれない……。
僕は真紅の絶叫が聞こえないように布団にもぐり、真紅からのメールを待つ。
『あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ……』
着た。

 

件名 もう、くんくんた☆らふぁえる
From 真紅
本文

そんなにも私の事を想ってくれていたなんて……。
メールとはいえ、ちょ、ちょっと恥ずかしいのだわ
でもありがとうくんくん。
貴方の愛を感じられて、とっても幸せなのだわ

ふむふむ、『い』ね?
じゃあ今度は私の番なのだわ、くんくん☆

いちゃいちゃしたいにゃー

ま、私ったら恥ずかしい(///
でゎでゎ、またねくんくん♪

 

効  果  な  し

 

もう嫌だ。
心からこいつをクーリングオフしたい

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