「……くっくっく、そう来るかぁ」
まぁレナっぽいと言えばレナっぽいね。
ほのぼのラブストーリーと。
少しだけえっちな要素を含んでるのも、学生っぽくてよろしい!
こりゃ、おじさんも気合入れて書かないと。
「よっし、第三章の始まり!」

 

 

―☆

 

 

「……は?え、何ここ?」
気がつくと、見知らぬ部屋の中心に座っている私。
ほんのさっきまで、少なくとも瞬き一回前までは蒼と一緒にいたはずなのに。
何故私はこんな所に……。
よく見るとこの部屋も何かがおかしい。
360度どの方向を見てもガラス張り、これでは外から部屋の中が丸見えだ。
それに私が座っている椅子。
周りを囲むようにレバーやらスイッチが大量にあって、まるで何かの操縦席みたいな……。
「その通りだよ唐沢くん!」
突然大音量でスピーカー音声が部屋に鳴り響く。
「ちょっと!あんた誰!?何で私こんな所にいんのよ!」
私も負けじと大声で対抗する。
するとスピーカー音声はその質問を待っていたかのように、雄弁に語りだした。

 

「説明しよう!今君が座っているその場所は、何を隠そう私が30年の歳月をかけて造った人妻型機動兵器『マンダム』のコックピットだ!
今地球には危機が迫っているのだ。宇宙から現れた謎の軍団『ジュダーン』により、地球は攻撃を受けている!
その圧倒的な戦力差により、地球の軍隊はほぼ壊滅。もはや希望の綱は君の乗っているマンダムだけなのだよ!!
ちなみに私が何故30年も昔からマンダムを造っているかというとだね、実は私は全然モテない人間だったんだ。
結婚がしたい!でも人間世界には私と結婚してくれる女性はいなかったのだ……。だから!
メイドさん型のロボットを作って毎日『おかえりなさいご主人様』とか言って欲しくてロボットの研究を始めたんだ。
ああ私は頑張ったさ。自らの欲望のため。メイドのため。30年間寝る間を惜しんで開発に勤しんだ!!
そして昨日ついにこのマンダムが完成したんだ。私は完成したマンダムを見たとき、思わず号泣してしまったよ。
こんなロボのはずではなかった!!私が作りたかったのはメイドさんロボなのだよ!
それがどう間違えたら全長18メートル体重30トンの巨体になってしまったのか!!
……フッ、いや本当はわかっていたさ。10年を過ぎた辺りから妙に大きいなとは思っていたんだ。
けれど私はその流れに逆らう事が出来なかった!ネタに走るのもいいな、そんな考えを払拭することが出来なかったのだ!!
ああいいさ。笑いたかったら私を笑え。メイドの家内が欲しくてこんな物を造ってしまった私を笑うがいいさ!!
アーーッハッハッハッハァうわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」

 

最後の方はほとんど涙声だった。
これだけ長い時間説明を続けたにも関わらず、私がここに連れて来られた理由が全くわからない。
余りこの声の主には関わらない方が良さそうだ。
「……で、私は何をすればいいんですか」
「うぅ……ひっく……あのね……あれだよ……マンダムで敵を倒しちゃって……」
何てアバウトな。
というか、大体何の訓練も受けていない私がこんな物を動かせるんだろうか。
試しにいじってみようとレバーの一つを掴んだとき、突然警報が鳴り響いた。
「……何この警報は」
「ぐすっ……敵襲かもね……ひくっ……センサー見てみ……」
センサーってどれ……。
いろいろ周囲を見回してみると、多数配置された機械の中で、一つだけピコピコと作動している物があった。
恐らくこれがセンサーなのだろう。
その機械には多数の光点が映され、チカチカと点滅していた。
――もしやこの点全てが敵なのだろうか。
「じょ、冗談じゃない!どーすんのよ!!」
「もう囲まれて……うぅ……るから逃げるのは……無理ぽ」
絶体絶命。
加えて涙声が非常にうざったい。
通信を切るボタンはどれだ……。
スイッチをあれこれ押していると、突然物凄い振動が部屋を襲う。
「ちょっ!何!?」
『ヒダンジョウキョウヲ カクニンシマス』
機械音声がすると同時に、頭上のモニターに何やら細かい文字が入力されていく。

 

― 靴下一部破損、左足首捻挫気味 ―

 

これはつまり敵の攻撃を受けたという事だろうか。
むしろ、左足首とかヤケにリアルなパーツ名ねこれ。
――まぁ、それはさて置き。
とりあえずピンチという事はわかった。
何とかしてこの状況を打破しないと……。
とりあえず手前にあるレバーを思いっきり倒してみる。
普通この手のレバーは移動用のはずだ。
「進めー!」

 

 

『アナタ、ゴハンガサキ?オフロガサキ?ソレトモ……ワ・タ・シ?』

 

 

艶っぽく喋っただけだった。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何この無駄な機能は……。
ああ元々はメイド妻ロボの予定だったんだっけか。
頭を抱えていると再び大きな振動。

― 動脈硬化、骨粗鬆症ノ恐レ有リ ―

何をされたの。
よくわからないが、敵の細菌兵器とかかもしれない。
ピンチな事には変わりなかった。
「もう!どうすりゃいいのよ!!」
「めんどいなら……えぐっ……自動操縦とか……」
「それを早く言いなさい」
手早くスイッチを聞き出し、自動操縦に切り替えた。

 

ジュダーン精鋭隊隊長である池上はとても焦っていた。
こんなのは報告と違う。
本来の目的は『埴輪型建造物の調査』だったはず。
だからこそ最小限の人数・武装でここに来た。
なのに……なのにその埴輪が機動兵器だったなんて……!
「隊長ッ!あの埴輪の動きがとてもキモ……ぐああッ!!」
埴輪の首から飛び出したミサイルが味方機に着弾。
隊員の悲痛な叫びと同時に、あざらし型戦闘機T.G(third grader)が爆発した。
「畜生、わが精鋭隊のディフェンスが!……あの埴輪は化け物か!」
というか、外見からして間違いなく化け物である。
「……クッ!一時撤退するぞ!!」
池上は撤退命令を全機に通達。
速やかにその空域を離脱した。

 

「……な、なんとか追い返したみたい……?」
はぁはぁと肩で息をする。
たった数分戦闘をしただけなのに、物凄い疲労感。
何しろこのコクピットは振動が物凄いのだ。
一歩動くごとにグラグラと揺れ、ジャンプでもしようものなら……。
そんな訳で、私が酔うまでさほど時間は掛からなかった。

何か飲み物が欲しい。
冷蔵庫がないかとガサゴソ探し回っていると、またしても警報。
ウンザリしつつセンサーを見ると、今度は三日月形の点が高速で接近していた。
「……何かまた変なのが来そうな」
むしろ、また揺れるのか……。
そう考えると非常に気が滅入った。

やがてその物体が視界に入ってくる。
青くて。
大きくて。
長くて。
ヒレがついてて。

――うわぁ。

どう見てもイルカだった。
しっぽをビシビシとうねらせて、凄い勢いで接近してくる。
「あざらしとかイルカとか妙なのばっかり……!」
唐沢の機体が一番妙な姿をしていることに、まだ彼女は気づいていなかった。
とりあえず先制攻撃を仕掛けよう。
ささっと倒せば、酔いが酷くなる前に済むかも知れない。
手元のコントロールパネルから危険そうなスイッチを選び、何個か押してみた。

ゴゴゴゴォーーッ!!

轟音と共に、マンダムの両肩から2発の大型ミサイルが発射された。
それらは空中で真ん中からパッカリと割れ、中から無数の小型ミサイルが射出される。
同時にマンダムは左手に装備した『ビーム買い物袋ライフル』を構え、イルカ型戦闘機に向けて1、2、3発と放った。
ビームはミサイルを追い越し、敵機を的確に貫こうと空を翔る。
敵機の反応も早かった。
第一射を着弾ギリギリの位置でかわし、二射・三射を大きく旋回して回避する。
しかし、物量が違いすぎた。
敵機が第三射を避けた直後、まるでシャワーの如く降り注ぐミサイルが敵機を包み込み、爆発した。
「……良かった。酔う前に終わったぁ」
ほっと安堵の吐息をつく。
ぐっと背伸びをして、シートに寄りかかった。

ビッ!

一瞬何が起こったのかわからなかった。
いきなり機体が傾き、直後に物凄い振動。
シートに思い切り後頭部を打ち付けてしまった。

― 左肩脱臼、体温ガ低下シテイマス ―

ナビに促されモニターを見たが、相変わらずほとんど意味が分からなかった。
辛うじて左肩に攻撃を受けたと言う事だけだ。
けど一体どこから攻撃を受けたのだろう?
改めてセンサーを見る。

――三日月形の点が映っていた。

その瞬間、爆煙を切り裂いて2発のビームが飛び出してきた。
マンダムの自動操縦が咄嗟にエプロンシールドで防ぐ。
シールド越しでもその衝撃は大きく、たった二発の射撃でシールドの装甲はほぼ熔解してしまっていた。
恐らく先程の振動は、このビームに貫かれて爆発した音だったのだろう。
「チッ、あれで無事だったの!?」
買い物袋ライフルを今だ爆煙立ち込める空域に向け、次の相手の出方を待つ。

やがて徐々に爆煙が薄れ、イルカ型戦闘機が姿を現した。
敵機は空中で静止。
しかしいつでも攻撃が出来る位置で、こちらの出方を伺っているようだ。
迂闊に動いたら撃たれる。
けれど行動はほとんど自動操縦なので、自分でもいつ動くのかわかったもんじゃない。
そんな微妙な緊張感の中、しばらくこう着状態が続いた。

汗が頬を伝って落ちる。
いつ終わるとも知れない極限状態。
それを先に破ったのは、敵機の方だった。

「……埴輪パイロットさん、聞こえますか?」

敵機からまさかの通信。
しかしもっと驚いたのは、その声。
何か物凄い聞き覚えのある……。

「……蒼?」
「え?か、唐沢さん!?」

通信機越しに狼狽するような声が響く。
――やはり蒼だ。
「蒼……あんたそんなイルカみたいなのに乗って何やってんの……」
「か、唐沢さんこそ……っていうか、そっちの埴輪のが凄いってば」
「げ、私の乗ってる奴ってそんなヒドイ外見してるの……?」
そういえば、このマンダムがどんな外見をしているのか、私にはさっぱりわからない。
気がついたらコクピットにいたのだから、姿を確認する術はない訳だし。
蒼は埴輪とか言ってたから……きっとずんぐりとした体型なのだろう。
開発者を怨みたいと言うか、これを妻にしようとした事に哀れみたいと言うか。
「まぁいっか、蒼なら戦う必要はないしね。一件落着ぅ?」
「だねー。あ、とりあえず投降してくれないかな?」
「りょーかい」
私は立ち上がって、椅子から降りようと……
ガチャ。
「え」
立ち上がった瞬間、椅子から謎の鎖が出現。
私を実験台に括り付けるかの様に、椅子に縛り付けた。
「ちょっと!何よこれ!?」
「ぐすっ……えぐっ……く……くけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけむしけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけんちんじるけけけけけけけけけけけけけ
けんだまけけけけけけけけけけけけケけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけこけこっこーけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけろろぐんそうはおじさまーとかあんなかわいいこにいわれてずるいとおもいますうらやましいなあもう!」

プツッ。

謎の笑い声と共に通信(?)が途絶えた。
何がしたいんだジジイ。
「ちっくしょ〜!」
何とかして鎖を外そうとするものの、きつく縛られているせいで腕が満足に動かせない。
「蒼……なんか縛られちゃった」
「……まさかそういうプレ」
「違う」
脱出できたら一発殴ろうと思った。
――それにはまず脱出方法を考えないと。
現在の状況を再び確認。
部屋の中央にある操縦席、その椅子に縛られております。
周囲のボタン類には手が届かない。
足も届かない。
絶 体 絶 命
「蒼ーなんとかして〜〜……」
状況を説明すると、蒼は困ったように唸りながらも承諾してくれた。
「……む、難しいけど頑張るよ」

そして、蒼のイルカ戦闘機が行動を開始した。
一度マンダムから離れ、大きく距離を取る蒼。
「気合で耐えてね唐沢さん!」
「……はい?」
一瞬何を言ってるのかわからなかった。
が、次の瞬間嫌でも思い知らされたというか。
これはちょっとヤバイんじゃないかなーと思ったというか。

蒼のイルカ戦闘機が大きく変形を始めた。
左右ウイングからバルカンの砲門が6つ、大型ビームライフル2門ずつが展開。
フロントには有線式ピームポッド。
そして何より、背びれ部分から飛び出した馬鹿でかいミサイル。
「蒼さんその大きいのは一体……?」
「何だろう、最終兵器かな?よくわかんないけど、とりあえず耐えて!」
「いやどう考えても無理だから!」
私の必死の呼びかけも虚しく、全砲門から一斉掃射される。
もちろんミサイルも。

 

――うぅ、短い人生でした……。

 

でもでも、蒼にならいいかな……なんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいわけあるかーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

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