その日、僕はいつものように通販をしていた。

国語辞典(英語Ver) 特価奉仕中!

韓国語、ロシア語、アルベド語も豊富に記載されたこの辞典。
昨日までは5万円だった本品が…
訳あり特化☆何といまなら特価
5800円!
限定1冊のみです。ご注文はお早めに!


何辞典やねん。
そして一晩で1/10に落ちる程の訳って何だよ……。
まぁ、とりあえず買いっと。
購入ボタンを秒間十連打した所で、雛苺が騒々しく部屋に入ってきた。
「じゅんー!」
「何だよ」
雛苺が僕の所にトコトコと歩いてくる。
そして、何か丸いものを差し出してきた。

「たつひこ」

首。
それは握り拳程もある、人形の首だった。
「たつひこを直してほしいのー」
何があったんだよ、たつひこ。
顔を上げると、雛苺が瞳を潤ませてこちらを見つめている。
「あーもう…」
まぁ、面倒だけど直してやるか。
人形の首だけってのも、なんか気色悪いしな。
「で、これの胴体部分はどこにあるんだ」
「ん」
雛苺がドレスのポケットをごそごそと漁り、もう一つのパーツを差し出した。

「……は?」

また首だった。
どういう意味だ?
「おい雛苺……何でまた首なんだよ。他の部品はないのか?」
「ううん、これで全部なのよ?」
僕の手元に首2つ。
これどうやって直せばいいんだよ。
元の姿が想像できないぞ。
「……雛苺、これ買ってきたときの箱はあるか」
「ん、多分あると思うのーっ」
そう言うや否や、どたどたと階段を駆け下りていく雛苺。
それから少しして、雛苺は少し大きめの箱を抱えるようにして持ってきた。
「これなの」
「どれどれ…」

 

ハイパーヒーローシリーズK 双頭仮面 竜彦
大豆の突然変異で生まれたサイキッカー竜彦
彼には生まれながらの特殊能力があった
それはティシュの空箱を人より少し小さくたためる事
その力を悪用される事を恐れた竜彦は、自らを断崖絶壁の洞窟に封印した
…時は流れ、封印された事によりストレスが溜まった竜彦はある作戦に出た
人類大豆化作戦
そう、人類が大豆になってしまえば力を悪用される事はない!
かくして双頭仮面竜彦は、人類大豆化作戦を開始したのである。
…しかし、竜彦には一つの大きな壁があった。
自らを封印したはいいが、強く封印しすぎて解けなくなってしまったのだ
どうする竜彦!ピンチだ竜彦!

「良い子のみんな、はやく助けてくれ」

 

「捨ててきなさい」

竜彦を箱ごと突き返してやる。
「ぶー」
膨れっ面をしつつも、雛苺は竜彦を持って部屋を出た。
架空のヒーロー相手に突っ込むのもなんだが、あえて言いたい。
竜彦バカすぎ。
更に言うと、他に十一体もこんなヒーローがいるのか……。
世も末だ。
大体、雛苺も何であんなの買うんだよ。
頭を痛めつつも、通販を再開しようと思ったとき

「ねぇじゅんー!」

また雛苺が来た。
「今度は何だ雛苺」
「これ直してほしいの〜」
そう言って、再び雛苺が何かを差し出してきた。
それは細くて長くて、何というか――。

「……髪?」

「ううん、けーいち

雛苺が持ってきたそれは、緑色の毛糸が数本束になったような物だった。
けーいちと言われても何が何やらわからない。
頭の上にハテナマークを浮かべている僕に、雛苺は要求を続けた。
「けーいちを、これとくっつけてほしいのー」
雛苺が黒い毛糸を一本僕の手に乗せる。

「おい」

緑色の毛糸の束と、黒い毛糸が一本。
これでどうしろと。
また意味のわからない展開になってきたぞ。何だこのデジャヴは。
「……箱を持ってきなさい」
「はいなのー」
再びどたどたと階段を駆け下りる雛苺。
しばらくして、またまた大きめの箱を持ってきた。

「……」

 

ハイパーヒーローシリーズF もずく大臣 敬一
もずくの精霊としてこの世に生を受けた敬一
彼の家はとても貧しかった
毎日を生きる事がとても困難で
ステーキを食べては、我が家にベンツがない事を嘆いていた。
そんなある日、彼の身に災難が降りかかる
ねずみとりもちにくっ付いて取れない
彼は焦った
もがけばもがくほど、とりもちは身体にからまってしまう
どうする敬一!マズイぞ敬一!

「良い子のみんな。泣きそうだ、助けてくれ」

 

「捨てろ」

 

「かわいいのにー…」
僕はその後2時間掛けて、雛苺に人道というものを説いた。

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